4-4 | いかに視覚イメージを読み解くか――第1次世界大戦期、米国プロパガンダポスターを例に U.分析篇:WWIポスターに見るジェンダーの表象 |
まず、ポスターを概覧して気づくのは女神が頻繁に姿を現すことである。たとえば、「あなたは公債をもう買いましたか」【#1】(http://archives.iii.u-tokyo.ac.jp/search/detailresult/id/368)の女神は、松明を掲げ7つの突起のある王冠を被っていることから、「自由の女神」だとわかるだろう。
#424 「イギリスと並んで」James Montgomery Flagg、1918年、米国
古代ギリシア・ローマ風の鉄兜を被り、ユニオンジャックが描かれた盾と三又の戈を持つ右側の女性は、大英帝国を象徴する女神「ブリタニア」である。三又の戈(トライデント)は海神ネプトゥヌス(ギリシア神話のポセイドン)の持物であり、ブリタニアが海原を統べる女神であることを示している。 このように第1次世界大戦期のアメリカ合衆国のポスターには、アメリカの象徴である「自由の女神」や「コロンビア」、イギリスの「ブリタニア」、フランスの「マリアンヌ」が、それぞれの国家のシンボルとして登場している6。彼女たちは、人々を守り、自由・正義の担い手として男たちを軍隊へ誘い【#160】(http://archives.iii.u-tokyo.ac.jp/search/detailresult/id/92)、戦闘を扇動し【#70】(http://archives.iii.u-tokyo.ac.jp/search/detailresult/id/178)、あるときは将来の兵士である少年(ボーイスカウト)から自由の剣を受け取り導いている【#46】(http://archives.iii.u-tokyo.ac.jp/search/detailresult/id/383)。
6 女神像や戦争における女性表象についてさらに知りたい人は、次の文献を参照。
◇モリス・アギュロン『フランス共和国の肖像――闘うマリアンヌ1789‐1880』ミネルヴァ書房、1989年 ◇若桑みどり『イメージの歴史』放送大学教育振興会、2000年 ◇若桑みどり『戦争がつくる女性像』筑摩書房、2000年 ◇若桑みどり『象徴としての女性像』筑摩書房、2000年 |