アメリカのポスターに関する上記の特徴はこれまでにも論じられてきたが、さらに加えて、セクシーな若い女性がたびたび登場していることが指摘できる。たとえば、水兵の制服を着た若い女性が「ああ！男に生まれてたら、ゼッタイ海軍！」【＃159】と悔しがる募兵ポスターは、カレンダーにも使われ当時大きな評判を呼んだ１枚である。同様に誘惑的なポーズで男を誘う「あなたが欲しい、海軍に」【＃158】（http://archives.iii.u-tokyo.ac.jp/search/detailresult/id/94）にも、セクシーな女と戦意高揚の結びつきを見ることができる。
　制服を着た若い女は、女には許されない前線の兵士になるのを夢見る姿をことさら見せつけることによって、戦争に行かない男たちに恥の意識を一層呼び覚まさせる一方、戦場に行った兵士の脳裏の中では守護の女神となった。アメリカ軍は、第２次世界大戦でセクシーなピンナップガールを、戦闘機や戦車のお守りにしたことが知られているが、まさにその系譜につながる女性像が、第１次世界大戦期のプロパガンダ・ポスターにすでに現れていた。

＃159　「ああ!! 男に生まれてたら、ゼッタイ海軍！」Howard Chandler Christy、1917年、米国