ひとくちにパンフレットといっても、やみくもに制作することはできません。私たちがふだん何気なく目にしている雑誌やパンフレット、広告やホームページなども、細かく見ていくと実によく工夫されていることがわかります。写真と文章のバランス、縦書きと横書き、段組みなどには、「一目でわかる表現方法」が活かされています。制作の作業に入る前に、まずプロの手になるパンフレットの実例を参考にして、そこで用いられている効果的なレイアウトや表現方法を学んでおくと、たいへん有益です。ファッション誌や女性誌などのレイアウトもとても参考になりますが、ここで取り上げる実例は、甲南大学の大学案内パンフレット『2010 KONAN IN KOBE』と、甲南大学の広報誌『甲南Today』です。
大学案内パンフレット
最初に甲南大学の大学案内パンフレット『2010 KONAN IN KOBE』を見てみましょう。これは甲南大学が毎年発行している最もフォーマルな大学案内パンフレットで、大学に資料請求すれば入手することができ、オープンキャンパス等の説明会でも配布されています。甲南大学に進学を希望する高校生が目にするものですから、大学についてのあらゆる情報がわかりやすく記載されています。 このパンフレットのなかで、まず文学部社会学科のページを見てみます。
一見して気づくのは、色調が統一されている点です。文学部の5学科すべてのページがえんじ色を基調にまとめられていて、それぞれ別の色を基調にした他学部のページと直感的に見分けがつくように工夫されています。また、左下の「カリキュラム一覧」の部分も、専門教育科目と共通科目とが色分けされていて、見やすくなっています。関連する内容を色でまとめて読みやすくするという手法は、ぜひ学んでおきましょう。 次に、学生生活の紹介ページを見てみます。
これは甲南大生100人にアンケートをとって、その結果から学生生活の実態を伝えようとするものです。アンケート調査は社会学科の授業でも学びますので、得意とするところです。注目したいのは、アンケート結果の提示の仕方です。普通は円グラフや棒グラフを使いますが、ここでは質問内容に関連したイラストがもちいられていて、何のことを聞いたのかが直感的にわかるようになっています。通学時間のところは自転車、アルバイトのところはハンバーガー、お小遣いのところは福沢諭吉といった具合です。なかなか手の込んだ方法ですが、参考にしましょう。 甲南Today
次に甲南大学の広報誌『甲南Today』を見てみます。これは甲南学園広報部が年に数回発行している広報誌で、甲南大学だけでなく、甲南高校・中学も含むすべての同窓生に向けた情報が掲載されています。甲南学園関係者向けの媒体ですので、大学案内パンフレットよりも内容が豊富で、リアルな情報が掲載されています。このうち、編集部が読者の様々な疑問に答える「こちら甲南特捜部」のページを見てみましょう。 第26号の「こちら甲南特捜部」では、アンケート調査にもとづき、甲南大学内の人気スポットが紹介されています。
全体として、硬い文章による説明ではなく、くだけた表現がもちいられており、在学生のコメントが紹介されていることもあいまって、とてもわかりやすいです。また、文章だけでなく写真もふんだんにもちいられ、視覚的に一目でわかるデザインになっています。 次に、第30号の「こちら甲南特捜部」では、甲南の学園歌とロゴの由来が紹介されています。
在学生も普段あまり意識しない学園歌とロゴの由来を取り上げ、紹介するという内容じたい、「こちら甲南特捜部」ならではのものですが、その提示の仕方も効果的です。甲南の学園歌とロゴの由来を説明しようとすると、どうしても難しい文章になってしまいがちですが、ここでは学園歌の楽譜や手書きの資料の写真、ロゴマークの絵や写真などと一緒に紹介し、文章とリンクさせることで、わかりやすく伝える工夫がなされています。また、学園歌の由来を紹介した部分と、ロゴの由来を紹介した部分とが色分けされ、さらに全体の説明が丸い茶色の吹き出しで、人物紹介が四角で区別されており、とても見やすくなっています。 このように『甲南Today』は、編集部の独自取材にもとづき、興味深い内容をわかりやすく伝える工夫をしていることがわかります。学生の手による学科紹介パンフレットの制作にあたっても、参考にすべき点といえるでしょう。 |