社会調査を学ぶ人のなかには、先に調査方法を限定するという癖がついている人がいます。社会調査といえばアンケート、取材にゆくならインタビュー、とは限りません。調査の目的、狙いがあってこそ、それに適した調査方法、対象を選ぶことができます。何を明らかにしたいのか、調査には明確な目的が必要です。
マーケティング・リサーチの質的調査のテキスト*に、クライアント(調査を依頼する企業)の調査目的を「調査課題へ翻訳」することが重要であるとして次のように述べています。「調査目的は、『(クライアント企業が)○○するために、△△を明らかにする』というようにクライアントが主語になります。それに対して、調査課題というのは、△△を明らかにするためには、生活者の何を調べる必要があるの、ということを記述したものであり生活者が主語になることがほとんどです。」(* 佐藤雅子『インタビューアー養成講座 テキスト 実務編』Video Research,2004、p.2)
調査をする側の問題意識を調査対象となる生活者のどのような問題、場面に置き換えることができるのか、「視点の転換」(上掲書p.2)は、社会調査をすすめるうえで大切なポイントです。専門領域の言語、視点、方法論、トレンドに頼りすぎていませんか。それでは、調査の意図も質問の内容も通じません。調査をとおして、あなたが何をどのように明らかにしたいのか、それをどのようなことばや課題に翻訳すればよいのか、もう一度見直してみましょう。
場合によっては複数の調査技法を組み合わせます。その方法論に適した対象を設定し、実際の調査対象を選定します。調査課題にたいして、いかに適切な方法であっても、どれほど理想的な調査対象を設定したとしても、日程、資金、対象との交渉、現場の状況、調査者の技能、などを考えあわせると、実践が不可能な場合もあります。何ができないかを認識することは、現実的な可能性を探るプロセスです。
調査全体を事前にどこまで構造化、統制するかは、調査目的、課題、方法、時間の制約などによって、一様ではありません。仮説検証型の計量調査においては、サンプリング、調査票の作成、発送、回収、情報入力、分析方法まで、事前に検討します。しかし、「まずは現場に足を運び観察しながら手がかりを探る」「この組織が結成された動機や時代背景、これまでどのような活動を行ってきたのかその経緯を関係者から詳しく聞く」といった問題を把握しながら探求してゆく調査の場合には、調査プロセスを統制することは困難です。
一つ一つの調査について、調査目的、課題、方法、対象を明確にした調査設計を文書化しましょう。最初の調査設計は、研究を整理するための理念的なものでもかまいません。次のステップとして、調査を実践するためには、倫理、時間、資金、人脈、機材、などの側面において、どのような制約や可能性があるかを検討してください。調査とは現実的な営みです。
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調査計画書を作成する
課題(1) 調査設計を構想する
以下の項目を含んだ調査計画書を作成してください。最初は、まず、あなたの思うようなかたちで調査設計してみてください。ただし、調査協力者にあなたの意図、作業内容がきちんと伝わるように。
- 研究テーマ(タイトル、内容、取り組み方)
- 調査目的/調査課題(目的におうじて現実的な調査課題を設定)
- 調査方法・対象(できるだけ具体的に解説すること)
- 調査時期(期間だけでなく、年月日を記載)
2人一組となって、調査計画を検討します。まず、自分の調査計画について説明し、相互の計画について不明な点、気になることを質問し、気づいたことやアドバイスなどコメントをしてゆきます。質問に答えているうちに、意外な指摘、アドバイスを受けて考えているうちに、調査がどんどん現実的なものになってゆきます。
課題(2) 実践のための計画
課題(2)の調査設計が実践可能か。現実を踏まえてもう一度、調査計画書を作成してください。課題(1)のレポートにさらに必要だと思われる項目、説明を加えてください。
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