研究テーマを設定する際に、タイトルだけでなく、趣旨を文章に書いてみましょう。テーマを具体的に考えることで、そのテーマにたいしてどのように取り組むのか、次を考えるための土台となります。さまざまなことを学ぶうちに、関心や研究対象が変わることもあります。テーマを変更、修正することはできます。自分の研究がどのように展開しているのか、その時々にきちんと認識することが大切です。
社会と関わりながら何かを学ぶには、あなたがしようとしていることを、さまざまな場面で説明しなければなりません。ことばにして表現しなければ助言をえることも、協力を求めることも難しい。研究助成金をえるためには、この研究にどのような成果が期待できるのかをアピールしなければならないでしょう。どのような場合にも、伝えなければ伝わりません。
研究テーマを設定したからといって、いきなり調査を始めるわけではありません。あるテーマにたいして、さまざまな取り組み方が可能です。それぞれのアプローチにおいて何を明らかにしたいのか、目的が明確でなければ、調査課題を設定できません。課題が明確になってはじめて、それに適した調査方法や対象を選定することになります。異なる次元を整理しながら、全体的な構想をたててみましょう。
ひとつのテーマにたいして多角的なアプローチが可能です。Mさんは、卒業論文の素材に「路上ライブ」を選びました。路上に集まる若者たちからは、演奏のレベルも服装も「普通」という印象を受ける、彼らは路上ライブに何を求めているのだろうか。3つの方向から研究をすすめました。
(1)通時的アプローチ(日本の路上ライブの変遷をたどることで現在を相対化させる) (2)比較的アプローチ(海外の路上ライブとの比較によって日本の特徴をさぐる) (3)事例研究からのアプローチ(実際の路上ライブを取材し実態を総合的に分析する)
実際の調査を企画するには、各アプローチの焦点をさらに絞って行く必要があります。どの時代にまでさかのぼって変遷をたどるのか、「海外」とはいっても世界はずいぶんと広い、事例研究のために全国津々浦々、取材や実演にでかけるのか。あなたが何をどのような方向から探求してゆくのか、その取組ひとつひとつの趣旨、目的を具体的に考えてゆきましょう。
|