ゼミ論文、卒業論文では何を調べますか。最初の段階では、多くの場合、研究テーマは漠然としています。何かに興味がある、疑問を持っている、気にかかる。しかし、曖昧模糊としている。だからこそ、気になることを少しでもことばにしよう、誰かに伝えてみようと試みてください。とりとめなくみえることも、話したり、書いてみると、ある文脈がうまれます。その筋道を何度かたどると、意識していなかったことに改めて気づきます。ゼミなどでの発表の場は、さまざまなコメント、ヒントをえるチャンスです。
自分の頭のなかだけで抽象的に悩まず、あなたの興味に関連する文献、資料にさわってみましょう。手元に何の情報もなければ、考える手がかりが見つかりません。先輩の卒業論文を読んでみる、パソコンで情報検索してみる、図書館や本屋へ行ってみる。資料探索の方法については、本コンテンツでも詳しく紹介されています。対象について広く、深く知る資料的性格が強い情報のほかに、その素材をどのように分析、解釈するのか方法論の参考となる情報もあります。
どのような文献、資料が存在するのか、情報を集めながらリストを作成します。資料はどんどんふえてゆきますので、整理しやすいように表記方針をきめましょう。情報収集の作業をしているうちに重要と思わしき主要文献や、キーワードに出会います。リストが増えてゆくと、情報の内容、性格によって、分類できることに気づき、あなたの関心がどのような事項と関連しているのか見えてきます。情報を整理する引き出し、サイトマップのようなものができると作業がしやすくなります。そんなふうに順調に情報収集がすすむとは限りませんが、何もせずに悩むよりは学ぶことが多く面白い作業です。
人と違うことをしたい、という意欲的な学生がいます。しかし、なかなか研究テーマが決まりません。独創的であるとは、ゼロから始めるということではありません。他の人が、何を、どこまで、どのようなかたちで進めているのか、先人の営み、先行研究を知ることも大切です。フィールドワークをとおしてさまざまな人と社会に出会い世界を広げたい、という人もいます。しかし、現場で漠然と何かを期待するのではなく、事前にできるだけの情報を収集し、広い発想に触れておきましょう。
情報収集や資料リスト作成作業をとおして、以前より関心が具体的になってきましたか。いくつかのキーワードが見つかりましたか。それを文章に書いてみてください。「○○について」だけでは、「○○」の「何」に関心があるのか、どのように扱おうとしているのか、わかりません。もう少しことばを加えて説明してください。あなたが探求したいことがらを具体的に問題化してみましょう。
「なぜ〜なのか?」という問題設定は、研究テーマとして書きやすく、人にも説明しやすい。ただし、問題によっては必ずしも正しい答や明確な原因があるとはかぎりません。原因究明型の問題設定に固執しすぎずに、「どのように〜なのか?」(現状を具体的に探る、ここまでに至るプロセスをたどる)といった実態把握から始めるほうが、調査研究を深く広く展開し原因を探る糸口をつかみやすいことがあります。
|