社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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6-2 コンピューターを使った情報検索、情報発信
6-2-8 まとめ ― メディア倫理(エシックス)について


 これまでの演習においては、メディア・リテラシーということが重要視されてきた。しかし、インターネットの急速な普及とその商業化は、メディア・リテラシーの枠を越えて、メディア・エシックスつまり、インターネットの倫理を学ばなければならない段階にきている。授業の最後に、この問題について注意を促しておきたい。
 21世紀に入ってもコンピューターの進化は、とどまることを知らない。その特徴は、極端なダウンサイジング化(形態化)によって、コンピューターが私生活と切り離せないものとなったことである。携帯電話の進化と普及からも、この傾向は裏づけられる。それとともに、ブログなどの技術が登場してきた。われわれの私生活そのものが情報化されてきたのである。ここで、次のような社会問題が生じている。
  1. 情報化の進展によりプライバシーが侵害される。スパイウエアによる個人情報の流出もあとを絶たない。われわれひとりひとりがこのことに十分注意を払わなければならない。
  2. 他者の情報上の権利を侵害してしまう。著作権や肖像権の問題が合法性の限界にまで到達している。携帯電話機能に写真機の機能が付加されたことは、この問題を深刻化している。また、ウィルスによる被害もあとを絶たない。われわれは、他人からしてもらいたくないことを、他人にしないように心がけねばならない。
  3. 経済活動の投機性が一段と強まり、ネット化が急速に進んだことにより、経済分野で、刑事・民事事件が多発している。株式市場にも、ネット商法にも、いろいろな危険がひそんでいることに十分な注意を払わなければならない。
 もともとインターネットは、民間用の技術としては、図書館ネットワーク構想から始まった。インターネットによって、図書館が持っているいろいろな図書情報を共有しようとしたのである。インターネットは、検索技術の進化とホームページなどの普及によって、わからないことがすぐ調べられるようになり、情報の共有化が進み、人類の進歩に役だつものとなった。だから、出発当初インターネットは、公益に資するものだったのである。それが商業化したのが20世紀末からである。われわれも含めて、社会全体がここでもう一度、公益重視に立ち返り、ネット社会の倫理性を再建する方向をめざさなければならない。

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