社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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8-1 卒論やレポート作成で困ったときには、先ず内容分析がおすすめ
8-1-1 世の中は内容分析のマテリアル(分析媒体)で満ちあふれている


 内容分析は、資料としてのマテリアル(分析媒体)の中身を系統的に測定し、そこに含まれたメッセージを複数の変数に変換し、それらの変数および変数間の構造や連関を解析し、その社会学的意味を理解する一連の方法です。一言でいえば、メッセージの社会学的分析を意味します。以下のような資料が、内容分析の具体的なマテリアルです。
  • 新聞や雑誌、機関紙、フライヤー、チラシ、マンガなど紙媒体の刊行物
  • ブログやウェブサイト, SNSなどネット上のコミュニケーション
  • テレビジョン, アニメーション, 映画, ライブ録画, 音楽ビデオクリップなど映像 ラジオ, 音楽CDなど音源
  • 日記, 手紙, メールなど私的文書 日常会話, 電話など私的音源 写真やプリクラなど
 皆さんは、ゼミナールでの研究報告や卒業論文にあたって、 「アンケート法でどのくらいレスポンデントが集まるか不安だなぁ」 「面接法の調査をしたいけれど、適切なインフォーマントが見つかるかなぁ」といった心配や悩みを抱いたことはありませんか。現実の生きた社会を研究対象とする社会学は、何らかの社会調査の手段でデータを収集する必要があります。アンケート法ではレスポンデント、面接法ではインフォーマントなど、必ず、生身の調査相手の協力が不可欠です。そのためには、関係者への事前の協力依頼や、調査相手との信頼関係すなわちラポールが言うまでもなく大切になってきます。実査そのものよりも、こうした社会調査の準備体制の方が手間暇がかかるといっても誇張ではありません。
 こういった時に威力を発揮するのが内容分析です。内容分析のマテリアルに含まれるメッセージは生身の人間が語った言葉や書き残した記録などで成り立っています。「まだこの世に生まれておらず」レスポンデントやインフォーマントの世話になりながら、これからアンケートや面接を立ち上げて社会調査データを新規取得するのとは異なり、「すでにこの世に存在している」データです。レスポンデントやインフォーマント確保の心配からはすっかり解放された方法なのです。
 現代日本のファッションとメイクについて研究するのであれば、一般の消費者へのアンケートや、ショップ、服飾関係者への面接が大切であることは言うまでもありませんが、一朝一夕にはアンケート法や面接法は開始できないでしょう。前述のように、相応の準備期間や実査のための費用も掛かります。そこで、内容分析の登場です。『ViVi』『CanCam』といった代表的なファッション誌に掲載された文面や写真の比較、その変遷の記述は、その後に実施するアンケート法や面接法における理論的予想(作業仮説)の練り上げにも大いに役立ちます。内容分析の結果、「ストリートスナップの元祖は『SEDA』などの青文字系のファッション誌が創刊されるずっと以前、1980年代半ばの『non-no』にあった」という知見が判っていれば、研究報告や卒業論文全体に係わる仮説形成にも重要な役割を果たします。
 J-POPやJ-ROCKの研究にあたって、有力な音楽誌や大規模店舗のフライヤーを内容分析するのも良いでしょう。ティーンの世界観やメンタリティの理解には「ONE PIECE」などその時代を代表する人気作品が連載される『週刊少年ジャンプ』といったマンガ誌の内容分析が欠かせないはずです。内容分析の方法を身につければ、研究報告や卒業論文は怖くないでしょう。なにしろ、世の中は内容分析のマテリアルで満ちあふれているのです。

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