社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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8-3 内容分析の設計をしよう
8-3-5 データの欠損や不在にいかに対応するのか


 分析媒体(マテリアル)は、つねに完全な形で入手できるとは限りません。何らかの事情で不完全な状態であることの方が実際には多いものです。それに怯んでいては、内容分析に取り組むことはできません。データの欠損や不在にいかに対応したら良いのかを考えてみましょう。
  • データの欠損
  • データの不在
 本来はあるべき情報が、劣化、破損、紛失などにより利用できなくなることを、データの欠損と呼びます。時間経過による素材の損耗、物理的もしくは電子的な自然劣化、保管庫における遺失、借入による遺失、故意の破損、盗難など事由は様々です。国立国会図書館東京本館所蔵の一般雑誌などでは、過去の心ない利用者による、特定の記事などを切り抜く悪質な破損も散見されます。これによって、版元にも保存されていない1970年代初頭の黎明期女性ファッション誌の一部が、利用不能の状態になっています。残念ながら、このようなデータの欠損は回復不能ですから、論文に当該雑誌の刊行年、巻号、該当頁とその事由を記し、分析範囲から除外することを記しておきましょう。ただし、国会図書館しか保有していない資料ではなく、日本中の多くの機関が保有しているものを地域の公立図書館などで調べている場合には、他の図書館での所蔵を確認し、その箇所だけそこで利用するような機動力が求められます。データの欠損は可能な限り、回避したいのです。
 週刊誌の場合、年間52週すべて発刊している訳ではありません。年末年始やゴールデンウィークには合併号という形で1週お休みすることが多いです。52週に対応する号に連番をふったとするならば、例えば、第2週の1月8日・1月15日合併号を第2号と考えた場合、次号は第4週の1月22日号となり、第3週(1月15日)はデータの不在となります。ただし、第3週に対応する号の不在は、前述したデータの欠損とは異なり、最初から存在しないデータです。暦上の週と実際の発刊が一致しないことに依るものですから、これは当該誌の年間刊行状況を論文中に詳しく記しておけば大丈夫です。

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