社会調査工房オンライン-社会調査の方法
←→
8-2 内容分析のマテリアル(分析媒体)は逃げもしないし, 隠れもしない
8-2-2 新聞や雑誌、機関紙や機関誌、フライヤーやチラシなど紙媒体の刊行物


 内容分析に相性が良いマテリアルとして、新聞や雑誌、機関紙や機関誌、フライヤーやチラシなどがあります。これらに共通する特徴は、紙媒体で入手することができるということです。インターネットの飛躍的普及に伴い、内容の一部がウェブ上で公開されることが多くなりましたが、すべての記事や広告がウェブ上で閲覧できる訳ではありません。ここでは、まだまだ紙媒体が主役なのです。インターネット経由のデータベースは8-2-3で述べます。
  • 新聞や雑誌は一般の読者に広く普及、流通させることを目的とした汎用性の高い商用メディア
  • 機関紙や機関誌は個別特定の団体メンバーを対象としたメディア
  • フライヤーやチラシは商品、サービス、店舗などの宣伝を目的とした無料配布のメディア
 全国紙、地方紙、業界紙など新聞は、内容分析が古くから得意としてきたマテリアルです。全国紙の政治面記事の専有面積や字数を測定するということが行われてきました。例えば、税制や国防などの争点を扱った記事の量が有力紙で異なっているか否か、アンケート法を併用し、特定の争点に係わる報道記事を読んだレスポンデントとそうでないレスポンデントとでは意見が異なるか否かといった研究が進められてきたのです。週刊誌や月刊誌など雑誌でも同様です。新聞や雑誌は、一般の読者に広く普及、流通させることを目的とした汎用性の高い商用メディア、つまり多くの人びとに読んで貰って初めて成立する媒体です。従って、人びとに関心の高い事柄、要するに、世論やその争点を調べるのに適したマテリアルなのです。
 新聞や雑誌は、多くの場合、日刊、週刊、月刊、隔月刊、季刊、年刊というように刊行サイクルが定められた定期刊行物です。日刊紙は、夕刊と号外を除けば年間356回、月刊誌であれば増刊号を除けば年12回の発行があります。過去に遡った場合、刊行サイクルの増減があることに注意すべきでしょう。現在は月刊誌ですが昔は週刊誌もしくは季刊誌だった雑誌もあります。刊行情報を調べれば新聞や雑誌はそれら刊行された全体つまり母集団が明快に確定できます。そして、そこから適切なサンプリングが行うことができますし、もちろん全数調査も可能です。
 ファッション誌や情報誌などで、分析対象が、例えば、最新号から1年間といった短い期間であれば、マテリアルを買い求めてゆくことによって手元に集めることが容易に出来ます。趣味の雑誌などであれば、もう既に手元に数年分のバックナンバーが保存されていることもあるでしょう。これらは内容分析の有力マテリアルとなりえます。しかしながら、研究テーマや仮説に係わるバックナンバーが、いつでも都合良く手元にあるわけではありません。全国紙や有力雑誌については大学図書館甲南大学図書館)で定期購読しておりバックナンバーも所蔵しています。多種多様な分野領域にわたって刊行されている雑誌については、国立国会図書館国立国会図書館関西館)など国公立の図書館の利用価値が大いにあります。
 機関紙や機関誌は、個別特定の団体メンバーを対象としたメディアです。政党・政治団体や宗教団体の新聞や広報誌、趣味のサークルや芸能人のファンクラブの会報などが該当します。政治団体や宗教団体は勧誘や布教が目的ですから、比較的簡単に閲覧できますが、それ以外のメディアはメンバーではない場合にはバックナンバーはもちろんのこと最新号の入手さえ困難な場合があります。研究の途上でそのことが判明したのでは後手になりますから、使用したいマテリアルが入手可能であるか否かは早めに調べておきましょう。
 フライヤーやチラシは、商品、サービス、店舗などの宣伝を目的とした無料配布のメディアです。全国展開した店舗やメーカーなどが発行するフライヤーの中には定期刊行の雑誌並のものもありますが、多くのフライヤーやチラシは、それっきりの単発もしくは不定期刊の「生もの」です。時機を逸すると入手できませんから、「これだっ」と思ったら、先ずは店頭や街角で積極的に入手しておくことを心掛けましょう。

 


←→
copyright(c)2004 Konan University All Rights Reserved.