社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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8-2 内容分析のマテリアル(分析媒体)は逃げもしないし, 隠れもしない
8-2-1 マテリアル(分析媒体)を選ぶことが大切


 内容分析にとって、マテリアル(分析対象)を選ぶことが最も重要です。アンケート法や面接法では、研究報告や卒業論文における仮説を立てた段階で、概ね、そのレスポンデントやインフォーマントは定まります。高校生の恋愛行動が研究テーマであれば、アンケート法でも面接法でも、高校生を対象にしなければならないことは明白です。しかしながら、内容分析の場合は、マテリアル選択に相当の幅が生じます。ある人は、ウェブ上の質問コーナーや掲示板を研究対象にするかもしれません。ある人は、高校生を読者層とした雑誌記事や投稿欄を研究対象とするかもしれません。何れにせよ、仮説にしっかり対応したマテリアルであることと、仮説が扱う対象を代表する標準的なデータセットになりうるマテリアルを選ぶことが大切です。
  • マテリアルは仮説にしっかり対応したものでなければならない
  • マテリアルはその対象を代表する標準的なデータセットに成りうるものを選ぶ
 内容分析は厳密な手順と技法に支えられた調査法ですから、どのようなマテリアルであっても分析可能です。しかしながら、研究テーマやそこでの仮説に対応していないマテリアル、つまりハズレのマテリアルを選んでしまったら、威力を発揮するどころか何の役にも立ちません。高校生の恋愛行動を知りたいのに拘わらず、30代向けの雑誌の内容分析を行っても得ることは少ないでしょう。たとえ高校生を読書層とした雑誌であっても、学習誌や進学誌、製作系のコアな趣味誌といった分野領域では恋愛行動についての記事や投稿はすこぶる少ないことが事前に予想され、それを窺い知る術は無いかもしれません。やはり、ファッション誌、情報誌や芸能誌など、恋愛ネタが掲載されやすいと思われる分野領域の雑誌をマテリアルに選んだ方が無難です。
 研究テーマや仮説に係わる記事や情報が載りやすいマテリアルであっても、知名度が低く普及していない雑誌を内容分析の対象に選ぶのは得策ではありません。8-1-5で述べたように、内容分析はマテリアルについて母集団とサンプルとの関係がハッキリしていることが大きな長所です。マテリアルをわざわざ偏ったサンプリングによって選ぶことは賢明ではないでしょう。日本雑誌協会が公表している印刷部数や日本ABC協会の公査部数を参考にして、普及率が高く、影響力が大きいと思われるマテリアル順に選んでゆくことが大切です。例えば、毎月30万部発行されている雑誌があるのにも拘わらず、それを外して5万部しか発行されていない雑誌のみを扱うとすれば、それは偏ったサンプリングです。要するに、その分野領域で、沢山売れている、多くの人に知られている、頻繁に利用されているマテリアルを優先しなければならないということです。マテリアルはその対象を代表する標準的なデータセットに成りうるものを選びましょう。

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