社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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8-1 卒論やレポート作成で困ったときには、先ず内容分析がおすすめ
8-1-6 内容分析の歴史, 代表的テキスト


 メッセージの社会学的分析は古くからなされてきましたが、バーナード・ベレルソンによって体系的に論じられ、汎用性のある調査法の一つとして認知されることによって広く普及しはじめました。内容分析が新聞、雑誌、ラジオやテレビジョン放送などマスメディアの発するメッセージを対象としてきたのは、その初期の段階で、市場調査や消費者行動などマーケティング、投票行動や世論など政治に係わる態度や行動を主な研究対象とする学者によって開発、利用されてきた経緯からです。いまでは、マーケティングや政治だけに留まらず、文化、宗教、教育、歴史、家族、福祉、医療、産業など多くの分野領域で、マスメディアはもちろんのこと、それ以外のマテリアルも使われはじめています。クラウス・クリッペンドルフ、そして、有馬明恵によるテキストが参考になります。
  • 内容分析はマスメディアが発するメッセージをマテリアルとして開発、利用されてきた
  • 代表的テキストは、クリッペンドルフ(1980=1989)、そして、有馬(2007)
Bernard Berelson(1952) Content Analysis in Communication Research. Free Press.(残念ながら邦訳書はありません)
ベレルソンは、内容分析をメッセージの、系統的、定量的、科学的研究方法として定義、開発、普及することに努力を傾けました。ベレルソンは、アンケート法で最も有名な古典文献とも言うべき『ピープルズ・チョイス』(ポール・ラザースフェルド、バーナード・ベレルソン、ヘーゼル・ゴーデッド著 有吉広介監訳(1944=1987) 芦書房) の著者でもあります。この本はアメリカの大統領選挙における投票意図と実際の投票との関連を、同一レスポンデントへの繰り返し調査であるパネル法を用いて解明した計量社会学の金字塔なのですが、この前後からコロンビア大学のラザースフェルドが中心となってラジオ・リサーチ・プロジェクトを足場にして開発、整備したアンケート法と、内容分析が併用され一体化した研究として普及してゆくことになります。
クラウス・クリッペンドルフ著、三上俊治・椎野信雄・橋本良明訳(1980=1989)『メッセージ分析の技法』 勁草書房
内容分析の歴史、概念的定義、調査設計、分析法、信頼性と妥当性など全篇にわたって詳細に論じた学術書です。
Robert Philip Weber(1990) Basic Content Analysis, second edition. Sage. (残念ながら邦訳書はありません)
小著ながら内容分析の有用な入門書です。刊行から四半世紀が経ちましたが、色褪せていません。英語圏では大変普及しているテキストです。
有馬明恵(2007)『内容分析の方法』 ナカニシヤ出版
内容分析を主領域とする著者による、入門者から研究者までどのレベルの読者にとっても有益なテキストです。
鈴木裕久・島崎哲彦(2006)『新版 マス・コミュニケーションの調査研究法』 創風社
115頁から143頁が第VII章として「内容分析」に割かれており、コンパクトな分量ですが内容分析の全体像が掴めます。

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