質問紙法の場合は、ケースがどのような単位なのかを改めて考えることはほとんどないでしょう。通例、それはレスポンデント個人だからです。世帯調査、夫婦調査、親子調査などで特殊な集計をする場合を除いては、この問題を意識することは普段はありません。ところが、内容分析では、ケースの区分と定義が最初の難関となります。ここを適切に対応しておかないと、後々困ることになります。分析方針のことまで、しっかり見通しながら、考える必要があります。
例えば、まんがでシミュレーションしてみましょう。先ず、考えられるケースの最大単位は、ある作家が生涯描いた全作品です。水木しげる、手塚治虫、といった稀代のアーティストたちが遺してくれた、もしくは存命中の作家の全作品が1ケースとなります。これらの場合は、ケース1個が膨大な情報を含むことになり、その比較の対象は、通例、他の作家ということになります。
次に、個別作品全話をケースとして考えることができます。例えば、松本零士の『宇宙海賊キャプテンハーロック』や藤子・F・不二雄の『ドラえもん』の刊行済みの全話がケースとなる訳です。連載中の『ONE PIECE』や『進撃の巨人』などであっても、測定時点までの全作品という捉え方をすれば大丈夫です。この場合の比較対象は、同じ作家あるいは異なる作家の作品間ということになります。
第三に、個別作品の1話をケースとして定義することが出来ます。週刊誌や月刊誌などに連載された作品であれば15頁から20頁前後の分量になるでしょう。比較対象は、複数考えられますが、その主たるものは、同じ作品内あるいは異なる作品間での異なる話同士ということになります。個別作品の1頁や1コマをケースにすることも可能です。個別作品や各話を詳細に分析する場合に適した方法です。これら以外の方法も、皆さん自身の創意工夫で考えてみましょう。比較対象を何に絞るかが、ケース定義の重要な分岐点となります。
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