ファッション誌の内容分析でのケースの区分と定義も、大まかに考えれば、8-4-2で述べたまんがの場合に似ています。ただし、作家というコンセプトがファッション誌にはありません。具体的には、以下に記す3種類の方法が主たる区分と定義です。
先ず、考えられるのは、例えば、2015年に刊行された『non-no』の1月号から12月号までを1ケースとする場合です。この方法を使えば、同じファッション系統に属する主婦の友社の『mina』の、やはり2015年1月号から12月号までを1ケースとして、両誌を比較することなどが可能になります。留意点としては、『non-no』と『mina』は前年の11月20日に既に2015年1月号が発売されていますが、通例、前年刊行のこの号から2015年分として扱います。他の雑誌でも同様です。
次に、『non-no』の2015年8月号といった個別の1冊を、1ケースとして定義することができます。比較の対象は、例えば、『non-no』の同年2015年の他号、1年前の2014年の8月号、他誌の同年同月号などが想定されます。これは最も標準的で応用がきき、機動力がある方法です。前述した2015年に刊行された『non-no』の1年分を分析単位とする場合でも、実際には、1冊単位をケースとして区分し定義しておいた方が有利です。1冊毎をケースとした上で、12冊1年分すなわち12ケースを合算し集計すれば、同じ結果が得られるからです。内容分析のケース定義では、「大は小を兼ねる」のではなく「小は大を兼ねる」ということになります。
最後に、個別のファッション誌に掲載された1記事もしくは1広告を1ケースとして捉えることも可能です。分析の方針が事前に明確かつ詳細に絞られている場合に、大いに役立つ方法です。例えば、2015年に刊行された小学館の『CanCam』と『AneCan』に掲載されたすべてのメイク記事を、個々の記事毎に1ケースとして扱うのです。焦点は絞りやすい代わりに、データセットを作った後での方針変更や応用がききにくいデメリットがあることを留意しておきましょう。
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