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8-3. 中国の財政の仕組み
担当:甲南大学 青木浩治 藤川清史


 計画期の中国では、傘下の国営企業を通じて地方政府が集めた資金を中央政府へ全額上納し、それを再び中央政府の指令によって地方政府が支出するという仕組みになっていました。ですから日本のような「銀行」という概念は乏しく、いわば財政と金融が渾然一体化していたと言ってよいでしょう。改革・開放後ではこうした計画経済の仕組みが大きく変貌し、従来財政が担当していた機能の一部が金融システムへ移管されました。同時に財政の仕組みもかなりの程度分権化されています。この章ではこれまで部分的にしか説明してこなかった改革・開放後中国の財政と金融の仕組みおよびその問題点を概説します。なお、中国の制度は日進月歩ですので、この章の記述もやがて時代遅れになることに注意して下さい。

8-3-1 中国の行政機構
 中国の財政を知る第一歩は中国の行政機構を知ることです。そこで最初に中国の行政機構について簡単に説明しておきましょう(図8-8)。

図8-8 中国の行政機構

図8-8 中国の行政機構
注1) 中国では台湾を「台湾省」と位置付けている。また香港・マカオは特別行政区であり、ここでは省略されている。
注2) 市轄区とは市の下の行政区画で、市が管轄するものの県と同格に位置付けられている。「街道」とは区の派出機構である。
出所) 国家統計局「中国統計年鑑」2002年、稲垣清「2時間でわかる図解 中国のしくみ」中経出版、2003年。

 日本の行政機構は「国」と「県」、その下の「市町村」からなっていることはよく知られています。そして国を「中央政府」、県以下の行政機構を「地方政府」と言います。これと同じで、中国の行政機構は首都北京にある「中央政府」とその他の「地方政府」からなり、中央政府を統括する行政府が日本の内閣に相当する「国務院」です。ちなみに日本では首相のことを「内閣総理大臣」と言いますが、中国では「国務院総理」と言います。現在の国務院総理は温家宝(Wen Jiabao)です。

 地方政府の中身は(1)27省・4直轄都市からなる省政府、(2)その下の地区級市政府(265市)、(3)その下の県および県クラスの市政府(2053県、うち県級市は393)、(4)さらにその下の郷・鎮政府です(図8-8)。ここで「鎮」とは県政庁所在地もしくは農村部のなかで比較的商工業の発達した町、「郷」とは農村集落という意味です。「省」に対応する行政区画は日本にありませんが、最小の青海省(523万人)から最大の河南省(9555万人)とわれわれの感覚で言えば「国」であり、強いて言えばアメリカの州というイメージです。また、地方政府の中心行政機構は人口30-50万人単位の「県レベル」と考えてよいでしょう。そして北京政府の財政が「中央財政」、省レベル以下の財政が「地方財政」です。なお、データの都合上、以下では省レベルで地方財政を代理します。

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8-3-2 中国の国家財政
a. 中央と地方
 次に、中国の国家財政の特徴を簡単に説明します(表8-2)。

表8-2 中国の財政(2001年)
単位 : 億元
1.予算内予算
中央政府 地方政府
収入総計 13777.7 支出総計 13777.7 収入総計 13805.25 支出総計 13805.25
 本級収入 8582.74  本級支出 4969.05  本級収入 7803.3  本級支出 13134.56
 地方上解収入 590.96  地方政府補助金 6001.95  中央補助収入 6001.95  上解中央支出 590.96
 債務性収入 4604  元利返済額 2806.7      地方政府財政余剰 79.73
2.予算外予算
中央政府 地方政府
収入総計 247.63 支出総計 210.74 収入総計 3578.79 支出総計 3318.28
注)中央政府本級支出のうち、利子支払いは元利償還に含めた。地方上解収入とは地方政府から中央政府に上納される金額、地方政府補助金とは日本の地方交付税に相当する。予算外予算は2000年計数。
資料)中国財政年鑑編輯委員会編「中国財政年鑑」2002年。

 中国の国家財政は大きく中央財政と地方財政、そして予算内予算と予算外予算という区分によって捉えることが可能です。ここで予算内予算とは正規の予算、予算外予算とは政府部門の事業収入や「費用」名目で徴収される収入を財源としたいわば「第二予算」であり、国家財政とは通常、前者を指します。しかし改革・開放後、地方政府を中心として後者の予算外予算が肥大化したため、その整理・統廃合が課題となってきました。この宿題は1993年の改革で部分的に実現され、中央政府レベルでの予算外予算は大幅に縮小されました。しかし、地方政府レベルでの予算外予算収入は2000年時点で本級収入(直接的な収入)の55.9%を占めているという意味で、依然重要です。

 2001年で予算外予算を含めた中国の総財政収入は2.0兆元(対GDP比21.1%)、国債等の発行収入である債務性収入を含めると2.5兆元(対GDP比25.9%)となり、GDPに対する相対規模という面では日本とほぼ同じです。また予算内予算レベルでの税収は中央が52%、地方が48%を占めますが、地方交付税制度により財源が中央から地方へ移転されるため、支出面では中央が28%。地方が74%にシェアが逆転します。ただし、中国の地方交付税というのは曲者で、実態的には「税収還付(増値税の地方政府への還付)」が大部分を占めており、地方政府間の財政不均等をならす役割をあまり果たしていません。日本と異なり、中国の中央財政は見た目ほどには大きくないと考えておくべきでしょう。

b. 間接税依存
 この国家財政の中身を収入・支出別に見ると、いくつかの特徴が浮かび上がってきます(表8-3)。

表8-3 中国の国家財政(中央・地方合計、2001年)
収入 金額(億元)   構成比(%)
1.税収 15301.38   93.4
 消費税 929.99 間接税
10843(66.2%)
5.7
 増値税 5357.13 32.7
 営業税 2064.09 12.6
 輸入品消費税・増値税 1651.63 10.1
 関税 840.52 5.1
 企業所得税 2630.87 直接税
3626(22.2%)
16.1
 個人所得税 995.25 6.1
 その他税収 831.9   5.1
2.企業損失補助 -300.04   -1.8
3.国有株売却収入 121.86   0.7
4.その他 1262.84   7.7
合計 16386.04   100.0
支出 金額(億元)   構成比(%)
1.基本建設支出 2510.64   13.9
2.文教・科学・衛生支出 3361.02   18.6
3.社会福利救済費 266.68   1.5
4.社会保障補助支出 786.22   4.3
5.全国社会保障基金 309.78   1.7
6.国防支出 1442.04   8.0
7.行政管理費 1212.52   6.7
8.政策性補助 741.51   4.1
9.その他 7473.2   41.3
合計 18103.61   100.0
資料)中国財政年鑑編輯委員会編「中国財政年鑑」2002年。

 まず本級収入では税収が最大項目、しかも増値税(17%、日本の消費税に相当)、不動産売買や商業・運輸業・金融業等のサービス産業に課される営業税(3-5%)、消費税(日本の物品税に相当)、関税等からなる間接税が税収の66%を占めるという意味で「間接税依存」となっています。ここで間接税とは、例えば増値税のように最終的な負担は消費者が行うもののその徴収を企業が代行する税を言います(「消費者→企業→税務署」のように間接的に徴収されるので、「間接税」と言います)。

 これに対して、家計の所得や企業の所得に対して直接課税する税が「直接税」であり、法人所得税と個人所得税がその柱となります。しかし中国ではこの所得税に多くの欠陥があると言わざるを得ません。一つに同じ法人所得税と言っても、1994年以降は原則33%(うち30%は国税、3%は地方税。1984年の「利改税」以降では55%)なのですが、業種や地域によって税務署による微妙なさじかげんが行われるとともに、外資系企業にはしばしば優遇税率が適用されます(経済特区や経済技術開発区では15%、しかも「二免三半減」といって利益が出た最初の二年は免税、その後三年は税半減)。なお、この優遇税制は今後廃止の方向にあると言われています。

 第二に、所得捕捉と徴税が不十分であり、脱税・節税は日常茶飯事となっています。

 第三に、同じことが個人所得税にも当てはまり、建前では800億元の基礎控除(それよりも所得が下回ると非課税となる課税最低所得)、5-45%の9段階累進課税制度なのですが、実際にはこの立派な制度も機能していません。事実、個人所得税収は2001年でも995億元と、中国のGDPの!%程度しかありません。一つに中国では長らく「個人が税金を納める」という慣習がなかったために納税意識が薄いこと、加えて個人の所得捕捉が企業所得同様に難しいからです。例えば上海等の大都市世帯は、夫婦共働きは当然としてしばしば副業を持っています。ところが公式統計でも明らかなようにこの副業収入が十分捕捉できておらず、いわば隠れ収入となっています。そのため大都市の消費水準は公式の世帯所得では考えられないほどの水準になるわけです。またこのことを裏返して考えれば、中国では所得税の「所得再分配」機能がほとんど機能していないということであり、これがまた個人間の所得格差拡大を助長してきました。

c. 経常予算と建設予算
 支出面に関する最大の特徴は、税金等の経常的な収入と行政管理費(人件費)や国防費等からなる経常的支出の差額、つまり「経常予算余剰」を国家建設等への支出である建設予算に組み入れる二段階方式となっているということでしょう。さしずめ前者の経常予算余剰は政府の貯蓄であり、それを政府投資のファイナンスに直接組み入れる仕組みです。

 こうした仕組みに加えて、近年その規模が急激に拡大しているのが社会保障関連支出です。具体的には医療・年金・労災保険基金への財政補助、都市部の最低生活保障のための財政支出等がそれであり、2001年時点でその総額は1096億元(対GDP比、1.1%)になりました。しかし実態は財源不足状態にあり、特に年金基金不足は深刻です。そのため中国政府は将来不足する基金を財政から負担せざるをえない状況にあり、その規模は一説ではGDPの60%にも及ぶと言われています。日本と同じように、帳簿に載らない隠れた債務が存在するのです。

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8-3-3 財政改革の変遷
 ここで参考のために、重複をいとわず改革・開放後中国の財政制度の変遷を簡単に振り返っておきましょう。その第一段階の改革は「地方財政請負制」です。具体的には1980年において、それまで収入を全額中央政府に上納する仕組みから、地方政府が収入を一部留保する仕組みに転換しました。しかし80年代前半では財源は全体としては地方というよりむしろ中央へその比重が移っていた時期です。

 中国の最初の大きな制度改定はやはり1984年改革です。第一に、それまでの財政を通じた国有企業への所要資金無償交付方式を改め、銀行を通じた有償借り入れに転換する改革が行われました(コラム:税収構造の国際比較)。この改革を中国語で「撥改貸」と言います。ここで「撥」は財政資金の意味ですので、さしずめ財政の金融化と言うことができます。なお、この「撥改貸」そのものは固定資産投資資金に関して既に実施途上にありましたが、この1984年改革により全国展開されていきます。

 第二に、国有企業はそれまで所轄政府に直接利潤を上納していましたが、1984年に法人税納税方式が導入されました。この改革を中国語で「利改税」と言います。また、「撥改貸」政策転換に伴い財政と金融の機能分離が進められた結果、国有企業赤字の補填は国家財政から支出されることになります。ちなみに中国ではこの赤字補填支出を「支出」ではなく「マイナスの収入」と処理しています。
 第三に、財政請負制がこの頃から全国展開されるようになりました。特に1988年には東部の比較的豊かな省に関して中央政府への定額上納(広東・福建省)と定率上納(北京・上海等)制度が導入され、残った財源は留保してよいという仕組みに変わります。ただし雲南省やチベットといったあまり豊かでない省では収入の全額留保が認められていました。これらの省では財源収入を全額留保しても不十分であるため、それに加えて中央政府から地方交付金という形で戦略的な財源補助がなされていたのです。

 しかし、こうした中国流の「地方分権化」は東部の比較的条件に恵まれた地域の活性化に役立った反面、中央政府の弱体化を招きました。実際、中国の中央政府財政収入は1984年時点で全国家財政収入の40.5%を占めていましたが、1993年には22.0%にほぼ半減します。いわば「地方が集めて中央が使う」という計画期の特徴は完全に後退し、「地方が集めて地方が使う」時代となったのです。

 しかし中央財政の弱体化は多くの問題をもたらしてきました。一つに当時の中国では地方政府による無秩序な開発区競争によりマクロ経済にインフレ圧力が形成されたこと、第二に、中央政府所要の財源不足が中央政府活動の制約となってきたこと、そして第三に地域間での財政力格差が顕著になったことがそれです。

 こうした諸問題に対処するために、1994年に「分税制」改革が実施されました。具体的には税収を国税収入(中央所轄国有企業所得税・関税等)と地方税収入(個人所得税・不動産税・地方管轄国有企業所得税等)、および中央と地方が分け合う共有税(増共有税値税・営業税等)に区分し、中央政府の財源基盤を拡大しました。ただし、実態的には税収還付制度によりその目的はあまり達成されていないことはこれまで繰り返し述べてきた通りです。

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8-3-4 中国の財政の問題点
 こうしたいくつかの改革にもかかわらず、中国の財政は依然、改革途上にあると言わざるを得ません。そのうちいくつかの問題点について簡単に触れておきます。

a 地域間での財政不均等
 日本では各地方の基準財政支出と基準財政収入を基数化し、その差額を地方交付税によって補填することによって地域間の財政アンバランスをならす制度が確立されています。日本の財政はいわば東京等の一部豊かな地域から財源を中央に集め、それを再配分する仕組みとなっているのです。そのため中央の官庁・議員の発言力がいたって強く、かつ予算執行面で地方政府の裁量の余地が制限されてきました。いわば財政が政治家(俗に言う「族議員」)による利益誘導の役割を果たしてきたのです。こうした弊害を是正する動きが昨今の「地方分権化」です。

 ところが中国では事態がまったく逆で、ある意味で地方分権化が行き過ぎてしまった感があります。図8-9を観察して下さい。この図は一人当たりGDPと一人当たり財政支出の関係を見たものですが、中国の地方財政は二重構造になっていることが分かります。ここで中国の財政を収入面ではなく支出面から観察しています。なるほど中国の地方財政はどの省・市もすべて赤字となっていますが、これは建前のこと、実際には上海や江蘇、浙江省のように内所が豊かな地域があり、その実態が収入面では鮮明とならないからです。そこでここでは財政支出でその実態を代理しました。

図8-9 中国の一人当たり財政支出(2001年)
図8-9 中国の一人当たり財政支出(2001年)
注) 赤は少数民族自治区等の中央政府補助が手厚い地域、青はその他。傾向線はその他地域を対象とした。
資料) 中国財政年鑑編輯委員会編「中国財政年鑑」2002年、国家統計局編「中国統計年鑑」2002年。

 まず、赤で示した少数民族が多数居住する自治区では、例えばチベットのように一人当たり財政支出が非常に高くなっています。中国では西部の低開発に加え小数民族の統治に悩んできた国です。これら一部の地域では中央政府から戦略的な財政補助が行われてきたのです。ところがその他の地域はどうでしょうか。傾向線が示しているように、明らかに豊かな地域ほど一人当たり財政支出も多くなっています。例えば一人当たり財政支出の最も高いところは上海市、2001年時点で4387元/人でした。これに対し最も低い地域は河南省の532元/人であり、格差は8倍を超えています。ちなみに河南省は中国で最も人口が多い省であることに注意して下さい。そして一般に一人当たり財政支出の多い地域は東部沿海部、低い地域は内陸部です。このように中国の財政は地域によって極端なアンバランスがあります。

b. 財政の地域格差がもたらす諸問題
 このような財政の地域格差の一因は、「税収基盤が国有企業にある」ことです。例えば1995年時点における全国家財政収入のうち71.1%は国有企業経由で徴収されていましたが、その比重は低下したものの、1999年時点でも依然全税収の49.5%を占めています。斜陽化している部門に税収基盤を置いている限り、財政事情が悪化するのは当然です。こうしたわけで国有企業からの税収に依存しなければならない内陸部地方政府の台所事情は極度に悪化しており、その結果として法的根拠の薄い「濫収費」、「予算外予算の膨張」が繰り返されることになります。そのためその負担を巡って多くの農民争議や労使紛争を引き起こしてきました。いわば財政の機能不全があちこちで不満の火種を作っているのです。これに対して、東部沿海部地域では非国有部門が族生していますので、財源は比較的豊かです。そのため「濫収費」問題はさほど深刻化していません。

 第二に、こうした財源格差は教育・医療・保健・衛生や都市部の社会保障制度といったいわば公共財のナショナル・ミニマム実現を阻んできました。例えば先に触れた「濫収費」とは、つまるところ教育財源の不足によって起こっているのであり、中国の所得再分配制度未整備の象徴以外のなにものでもありません。

 第三に、財源基盤の脆弱性は「諸侯経済」の温床になってきました。地方政府は大部分の国有企業を管轄していますので、その保護は同時に財源確保を意味します。ですから地方政府は様々の手段を用いて地元企業を保護しようとするわけです。そしてこれが全国市場の成立を阻んできました。

c 中央政府の財源不足
 こうした財政の地域アンバランスをならすのが中央財政です。具体的には比較的豊かな地域から財源を集め、それを比較的貧しい地域へ再分配する機能であり、これを「政府間財政調整」と言います。ところが改革・開放後進展した財政の地方分権化は、一面で地域の活性化に役立ってきたものの、この中央政府の機能の弱体化を招いてきました。この問題に対処しようとしたのが1994年の分税制改革です。しかし、この改革は中国において昔からはびこる「地域エゴ」によって実態的には反古にされています。最前より述べている「税収還付制度」という骨抜きが行われたからです。地方分権化により内所が豊かになった東部の地方政府が、自分たちの財源を手放そうとしないのです。実際、2001年時点でも中央政府が自らの目的に使える税収は単純計算で3200億元程度、国債等発行収入を除く全国家財政収入の2割弱、GDPの3%強しかありません。

 加えて1998年より中国政府は景気安定や社会保障制度整備という新たな役割を担わざるを得なくなりました。ところが中央政府には固有の財源がほとんどありません。だから同年より当座しのぎとして国債増発に走らざるをえなくなったのです。このように内陸部の地方政府はもとより、中央政府さえ深刻な財源難に直面してきたのが中国の実態です。例えば、図8-10は7章で示した中央政府の国債依存度(本級支出と国債償還費の合計に対する債務性収入の割合)の推移を示したものですが、すでにその水準は60%と、財政悪化に苦しむ日本以上の状態にあります。また本級収入と国債等発行収入のうち36%は借金返済のために充当されています。収入の6割を借金に依存し、総収入の4割弱をその借金の返済に充当するという図式です。このように中国の中央政府は財源不足によりその機能を十分発揮できない状態にあるのです。

図8-10 中国の中央政府国債依存度
図8-10 中国の中央政府国債依存度
注) 中国の国債依存度(決算ベース)は国債依存度=100*債務性収入/{中央政府本級支出+利子・元本返済額}により計算した。日本(国債発行額÷{一般歳出+国債費})は予算ベース。
資料) 中国は国家統計局編「中国統計年鑑」、中国財政年鑑編輯委員会編「中国財政年鑑」、日本は財務省HP等。

d. 改革の方向性
 中国の財政の最大の課題は、これまでの説明からも明らかなように「改革で得をした人から税金をとり、改革でワリを喰った人へそれを再分配する仕組みを創ること」です。その核心は所得税の徴税能力強化と中央財源化、そしてそれを再分配する仕組みの構築です。その試みは既に開始されており、2001年1月に発表された法人・個人所得税の「中央・地方政府税収配分基準」がそれに当たります。具体的内容は次の通りです。

(1) 運輸・郵政・四大国有商業銀行・三政策銀行・海洋石油ガス企業の法人・個人所得税は中央財源とし、残りの所得税は共有財源とする。
(2) 共有財源の配分比率は2002年が中央:地方=50:50、2003年が60:40、2003年以降は再考する。
(3) 中央政府の財源増加は中西部地域への移転支出に充当する。
(4) 新規登記企業の徴税管理は国税局へ移管する。

 中国は「上有政策、下有対策(上に政策があれば下には対策があるという意味の中国の流行語)」のお国柄であり、徴税能力強化という課題は実現が難しいのですが、以上の改革の方向性は従来の問題を改善する第一歩と位置付けることが可能です。いずれにしても財政制度は「国のかたち」を決める大切な制度です。改革・開放後中国の財政は、時代の要請に依然マッチしていない未完成な段階にあると言ってよいでしょう。

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