株式持ち合い 経営財務論

 株式持ち合いとは、企業Aの株式を企業Bが所有し、逆に、企業Bの株式を企業Aが所有するような株式の所有形態をいいます。わが国の大企業において、このような株式持ち合いは一般的な現象で、6大企業集団 日本の企業グループ]を中心にそれぞれのメンバー企業が複雑な持ち合い関係にあります。図は住友系の企業の株式の持ち合い関係を描いたものですが、 グラフへ 銀行と保険会社を中心に非常に複雑な持ち合い関係が形成されていることがわかります。

 株式持ち合いは、戦後のGHQによる財閥解体にともない、持ち株会社 純粋持株会社]や同族ファミリーが保有する株式が市場に放出され、その後の資本自由化の流れの中で、乗っ取り、買い占めの危険を感じた各企業が安定株主工作として進めてきたという歴史的背景があります。このような株式持ち合いにより、わが国企業の多くは会社支配を脅かされることなく、安定した企業経営を続けてこれましたが、問題点も指摘されています。

株式持ち合いの問題点
  1. 競争の公正さを阻害する要因をはらんでいる。つまり、お互いに取引がある企業同士が、長期安定的な取引関係を結ぶことを意図したものであるケースが多い。
  2. 各企業が乗っ取りや買収の脅威から逃れた結果、企業経営に対する資本市場や株主からのチェック機能が実質的に働かなくなる。そのため経営者は自分本位の勝手気ままな経営をしてもペナルティを受けない。
  3. 実質的な資金調達になっていない。持ち合いをする場合、ある企業が株式を発行してもその分で相手の株式を保有するため、実質的には「紙の交換」で、資金調達にならない。

(馬場 大治)