所有と支配の分離 経営管理論

 株主は、株主総会に出席し、経営者や重役を選任したり、決算を承認すること等によってその企業の経営に参加し、チェックする権利が与えられ、所有者としての権利が保証されています[ 株式会社の仕組み]。ところが実際は、株主が権利を実質的に行使できず、企業経営は経営者によって支配されている状況にあることを所有と支配の分離といいます。このような状況の理由として、企業が巨大化する中で株主数が増加し、株主一人あたりの持ち株比率が低くなったため、もはや一人では株主総会で影響力を発揮できるほどの株主が存在しなくなったことがあります(=株主の群小化)。また、企業経営が専門化、複雑化した結果、企業の外で出資だけをしている株主には実質的に企業経営をチェックできるだけの知識も時間が持てないことも理由として考えられます。

 所有と支配の分離という概念は,バーリー&ミーンズ(A.A.Berle & G.C.Means)が1930年代にアメリカ企業の実態調査で明らかにしました。その当時で企業数で4割、資産額で6割の企業が所有と支配が分離した経営者支配になっていると報告しています。その後、この種の調査は何度が行われましたが、1960年代前半には圧倒的大多数の企業が所有と支配が分離した経営者支配になったといわれています。ところが、1960年代後半から合併・買収ブームが起こったり、短期利益を志向する機関投資家の持ち株比率が上昇したりしたことにより、経営者が株価や株主を気にせずには企業経営ができない状況が発生しました。現在も続くこの現象は、一般に「株主反革命」といわれています。わが国では、戦後の財閥解体とその後の株式の相互持ち合いの形成[ 株式持ち合い]により、諸外国と比べてもはるかに徹底した経営者革命が起こっていると考えられます。ところが、バブル崩壊後の持ち合いの解消、外国人株主の比重の増加、生命保険等の機関投資家の意識の変化、コーポレート・ガバナンス論議の盛り上がり[ コーポレート・ガバナンス]を見ると、株主反革命的な状況が起こりつつあるようです。

(馬場 大治)