ここまで引用の形式や文献・資料リストについて述べてきましたが、それ以外の点を含めても、見やすく、わかりやすく!という文章作法のいくつかを解説します。基本的な形式がしっかりしていれば(要するに見栄えが良ければ…)、文章というのはそこそこしっかりしたものに見えるもんです。中にはうるさい方々もおられますから(オレノコト…?)、守っておいて損はありません。
たまに「要は中身が肝心なのだ、ウルサゆうな!」とムカつかれる、唯我独尊的な方々も世の中にはいらっしゃいますが、こういう方々は概して書かれた文章の中身がスカスカ、はたまた自己の感覚や感性に過剰に依拠し立証性・説得力に乏しい、というのはこれまでの経験上よくある話です。考えてみれば、基本形式が身についているということは、それだけ文章を書き慣れているということですから、当たり前といえば当たり前…。 そこで、書式とレイアウトに関する点をいくつかまとめてみます。 行間・字間と字のサイズ
試問でご登場ねがう社会学科の先生方の中にはかなり老眼が進んでおられる方もいらっしゃいます…(^_^;…。従って、あんまり小さなポイントの字、詰まりすぎた行間・字間ではかなり苦しいかと思います。逆に、大きすぎる字・スカスカの行間・字間も読みにくいものです。
大体の目安ですが、A4用紙の場合、
10.5〜11ポイントの字
(両サイドを詰めた引用などは2ポイント落とし、8〜9ポイント) 30〜40行、40字前後/1行 といったあたりでしょうか。[書式]→[段落]→[インデントと行間隔]で行間が決められます。また[書式]→[文書のレイアウト]、または[ファイル]→[用紙設定]で行数や字数の指定・余白の指定・ベースになるフォントとポイント数の指定が設定できます。 したがって、いきなり書き始めず[用紙設定]や[文書のレイアウト]を真っ先に開き、基本的な設定をしておいた方が賢明です。特に、[余白の設定]をまず何よりも優先してください。後で余白を変えたりすると、設定したレイアウトなどがガタガタになることがあります。 行間隔・字間設定
字のポイント数に応じ字間・行間を変えるということを施してください。「行間隔設定・字間設定」を細かく設定すると格段に見栄えは上がります。[書式]→[段落]または[文章のレイアウト]で設定できます。
しかしWordの場合、字のポイント数を落としても行間が自動的に詰まってくれません(多分プログラムのし忘れ?新しいバージョンではいかに?)。したがって、字を小さくすると行間がスカスカになります。面倒ですが、手修正をお願いします。 また、脚注の文字は2ポイント落とすという話は前述しましたが、行間も変えてください。[書式]→[段落]を覗くと、初期値では[固定値]となっています。これでは大概スカスカです。[最小値]に設定し直しておいてください8。 プロポーショナルフォントについて
書体には、「和文フォント - 欧文フォント」「明朝系フォント - ゴシック系ファント」などいろいろな分類がありますが、一つの分類として「等幅フォント - プロポーショナルフォント」という区別があります。後者は通常の活字書体と同じく文字によって幅が微妙に異なります。字数を手軽に換算するときは等幅フォントが便利ですし、メールでは通常等幅フォントの使用が原則ですが(特にアスキーアートの場合)、印刷のでき上がりは断然プロポーショナルフォントの方がキレイです。通常、等幅フォントはフォント名にそれとわかるように記載されています。
字体と強調
文字修飾は使用しないでください。具体的には斜体・太文字・袋文字・影付文字・網かけなどです9。見苦しくなるだけです。
文章編集の基本はフォント(字体)とポイント数(字の大きさ)のみの組み合わせです。現に、プロの編集現場ではパンフレットや広告以外、めったにみることはありません。フォントも通常は2種類、多くても3種類です。 画面上部にあるボタンにある[B]太文字指定)とか[I](斜字体指定)、[網掛]などは簡単なのでやたら使いたがる人が多いですが、ホンマ見にくいだけの、強調の効果がほとんど感じられないものです。以下に明朝系の書体を太文字指定したものとゴシック系の書体とを並べておきます。どちらが強調効果が強いか一目瞭然です。 〈例〉をみてください。本文は明朝系の字体を使用します(教科書体・楷書体・〜明朝など)。ゴシック系は強調部分・小見出しにのみ使うのが一般的なルールです(太ゴシック・中ゴシックなど)。ゆめゆめゴシックを使う箇所に横着して[B](太文字指定)ボタンを押して事足れりとしないでください。 〈例〉で示したように、章タイトルはポイント数を2〜3段上げた明朝を、章を細分化した場合の節や小見出しはゴシックを使用します。 その他にも、丸ゴシックやポップ体・ペン字・楷書・草書・勘亭流などさまざまなフォントがありますが、これらはポスターやら書籍・雑誌の表紙に使うためのもので、論文には絶対に使用しないで下さい。いろいろなフォントが踊っていると目がチカチカします。 なお、Windowsにプリインストールされている「MSゴシック」はかなり細いゴシックで明朝系のフォントの中ではまったく目立ちません。雑誌などで本文に使用される細ゴシックです10。他のゴシック体を使用してください。 カッコの使い方・強調
前述の引用・参考文献とも関係します。それ以外の点でも「」と『』との区別、必要に応じて〈〉11や“”や‘’を使ってください。
・強調(例3. 4.)
・逆接的意味(例1. 2.) ・重要な用語(例3.) という3点にまとめられます。 ちなみに、強調には字体を一部ゴシックにする方法もあります(例3.)。 文章のレイアウト -タブ-
世の中いろんな人間がいますが、風呂に入る前に化粧をする方はまずいないと思います。文章も同じことです。でも、本文を書く前に、あるいは書きながら、文章を見やすくするべく、行頭をそろえるとか、フォントを変えるとか、やたら整形を施したがる人がいます。とんでもないことです!全体の余白を変更したり、字体を変えたりすると、こうした整形の多くは崩れさってしまいます。
整形はすべて本文が終わってからにした方が賢明というものです。実際、プリントアウトしてみるとそれまでのスタイルが気に入らなくて全部整形し直しなんていう事態はままあります。 そこで、ここまでフォントと行間に焦点を当ててきましたが、ここから別の角度から、見栄えよくするためのテクニックを基本的な点をかいつまんでまとめてみます。
まず、段落頭以外、絶対にスペース(空白)で整形しないこと!これをすると確実にレイアウトは壊れます。なぜなら、スペースとは一つの字と同じ扱いでポイント数を変えればスペースの幅も変わってしまいます。
そこで、頭を揃えたいといったときには、タブを使えということになります。もちろん、タブの幅、すなわちタブを打ったときどのくらいカーソルが飛ぶかという幅は自由に変更できます。[書式]→[タブとリーダー]です。ここで設定したタブ幅は文章全体に指定することも可能ですし12、範囲指定をした上で設定すれば一部の領域のみこの設定値が有効となります。 でもまだ多くの人が整形にスペース・バーを押しているようです。確かに、昔のワープロやパソコンは日本語を扱うとき原稿用紙を基準として考え、1頁あたり何行、1行あたり何字という形で仕様ができ上がっていました。こうした時代なら、スペースも文字も固定値の幅をもっており、スペースで整形するということはけっこう可能でした。しかし今日、WindowsやMacの時代、この考え方は一部のワープロソフト13や、やや見栄えが劣る等幅フォントを使用したときなどを除いて通用しなくなりました。つまり、文字もスペースも記号もすべてグラフィックとして扱われるからです。 タブの修得、これが今日の文章作成の基本手法です。 文章のレイアウト -その他-
タブ以外にも文章をレイアウトする方法はあります。
1. ある範囲を選択し画面上部のバーをスライドさせ両端を決める
2. 2行目以降のみ左端を下げる([ぶら下げ]) などけっこう探せばあります。ちなみに、2. に関しては 7-1-4 引用文献リスト・資料リスト の〈例〉を参照してください。2行目以降がちゃんと見やすく10数mm字下げしてます。決してスペースは使ってません。 整形の手法は余裕があるときに、ファイルを保存した上で、[ctrl+Z]に指を置きながら(7-1-7 知ってて損のないTips(というほどのものではないが…))、遊びながらいろいろと試してみてください。余裕がないときにやると取り返しのつかない事態に陥ります…。 カーニング
日本語の場合、字の幅に応じ文字と文字との間隔、文字と句読点や記号との間隔が微妙に異なっています。後者の方が若干狭くなっています。これを「カーニング」といいます。これが施された文章は大変きれいです。もともとの発想は欧文の「ジャスティフィケーション」という、行末を揃えるために単語と単語との間隔を微調整するやり方と共通しています。多分初期値では「ON」になってますが、禁則処理と同様、[書式]→[段落]→[体裁]で調べてみてください。
禁則処理
ときおり句読点や閉じる側のカッコが行頭に出ているのを見かけることがあります。手書きであれば「ホンマ、文章を知らん奴」ということでニコニコ・バッサリですが、機械で文章作成している場合は十中八九設定のし忘れかミスでしょう。「禁則処理」という項目を探してください。[書式]→[段落]→[体裁]にあります。ここで設定してください。禁則には厳格なものから緩やかなものまで、さまざまなレベルがあること、そして禁則対象にはさまざまな文字があることがわかります。
見やすいリスト
もう一度 7-1-4 引用文献リスト・資料リスト の〈例〉をみてください。最初の著者名のみが飛び出ていることがお分かりでしょう(正確にいうと2行目以降が下がっている)。文献リストを見やすくする工夫です。やり方は、該当行をクリックしカーソルをおいた上で、[書式]→[段落]→[インデントと行間隔]→[最初の行](初期値は[なし]になってます)で[ぶら下げ]を選択します。文献リストなどの場合は、隣りにある[幅]で約15mmくらいに設定してください。
ちなみにこの数値の初期値は[書式]→[タブとリーダー]における[タブ幅]の値が適用されます。 図版の挿入
挿入できる図版の種類
図版の挿入には、大まかにいって
[テキストボックス]
[表(Wordで作成するもの・Excelで作成するもの)] [図(他のソフトで作成)] という、3つの概念があります。ただ、[文字列の回り込み][枠線の太さの選択][枠線の有無の選択]など、それぞれできることとできないこととを備えており、TPOに応じて使い分ける必要があります。
挿入の方法
具体的な挿入方法ですが、まず[表示]から[ページレイアウト]モードになっていることを確認の上14、ルーラの目盛り15を参考にしながら、[挿入]→[テキストボックス]を選び、適当な大きさまで引っ張ってください16。その中には何でも貼り付けることができますし、上と左のルーラを基準に大きさだけを確認した上、空白のままにしておき、コピーした資料や写真を貼付するという使い方もあります。 ただし、図や表ではわざわざテキストボックスを作成する必要はありませんが、テキストボックスがあれば図の下にキャプションをつけるといったことがやりやすくなるのも事実です。 図版のレイアウト
文字列の回り込み
単純に[コピー&ペースト]した図やテキストボックスを作成したばかりの段階では、これらは本文に被さったままの状態です。図やテキストボックスをクリックして選択状態にし、[書式]→[図]を選ぶと、[枠線の指定]や[文字列の回り込み]などができます。しかし、回り込みは図の最も外側のラインに沿っておこなわれるため、図の形によっては変なところに文字列が食い込んでしまいます。この場合、回り込みの選択で[外周]ではなく[四角]を選んで下さい。表でも同じように[文字列の回り込み]指定ができます。 なお、図版と本文とをどのくらい離すかという指定も可能です。
枠の周囲
ちなみに、図版や表は好きなところに移動できますし、拡大縮小もできます。 ただ、初期設定では[レイアウト枠]や[テキストボックス]の周囲はかなり存在感を誇示する太めの線で囲われていますし、文章の回り込みもできていないはずです。こうしたときは、[表示]→[ページレイアウト]モードの状態で、レイアウト枠やテキストボックスをクリックして選択状態にし、[書式]→メニュー最下部の[テキストボックス]または[レイアウト枠]に移動するか、選択状態になっている枠線の上をダブルクリックすると、[色と線]とか前述の[文字列の折り返し]などのメニューが現れますので、最も細い枠線にするなり、文章の回り込み方を指定するなりして下さい。 〈空白〉の挿入
さて、後で雑誌などからコピーした図表、印画紙に焼き付けた写真を貼付したときはどうしたらいいでしょうか?
答えは簡単です。ルーラを目安に適当な大きさのテキストボックスを作成しておけばすみます。ただし、その際は枠線を消すことをお忘れなく。黒い枠線が入ったままのところに写真を貼ると葬式写真になってしまいます。 テキストボックスの枠をダブルクリックするとメニューが現れます。[色と線]から[線]のところで[線なし]を選んでください。もちろん、[文字列の回り込み]の設定もお忘れなく。 表の作成
表の作成は、上部のボタンに[表作成]がありますし、[Excelのワークシート挿入]ボタンもあります。いずれも文書のカーソルをおいたところに表が作成されます。
なお、Excelで表を作成する方が何かとやりやすいのは事実ですが、[単純ペースト]と[リンク]とは明確に区別しておいてください。[単純ペースト]ではWordに貼り付けた段階で[表]として扱われExcel上での修正はききません。逆に[リンク貼り付け]ではExcelでの修正がダイレクトにWordにも反映されます。ただし、[リンク貼り付け]は[単純ペースト]と比較しファイルサイズが膨大になり、ひょっとしたら一枚のフロッピーには保存できなくなるかもしれません。
まあ、いろいろと試してみてください。文章とは無関係のイラストなど、遠慮なく入れてくださって結構です。何事も遊び心は大切です。ただ、遊びがきつ過ぎると「好きやの〜、オノレは」と思われてしまうだけで、読み手がウザッタクなります…。
8 この際、前述の通り、[文字を行グリッド線に合わせる」というチェックがはずれていることを確認してください。
9 ただし、アンダーラインは場合によっては必要になることがあります。 10 ゴシック体は[―](ダッシュ)と[ー](音引き)、[一](いち)が区別しにくい字体です。ちなみに音引きとダッシュとはよく混同されますので注意してください。 11 〈〉は、キーボードにある<>とは異なります。山形カッコと不等号は区別してください。またカッコの多用、すなわち強調のやり過ぎは文章自体が見苦しくなり、かえって強調効果が薄れてしまうもとです。何事もほどほどに。 12 前述したように、この場合[ぶら下げ]の幅もこの値を初期値とします。 13 [一太郎]など日本で生まれたソフト。 14 文書画面の左にもルーラー(定規)が表示されていれば[ページレイアウトモード]です。 15 [編集]→[初期設定]→[表示]で[垂直ルーラ]にチェックを入っていることを確認の上、[全般]で[使用する単位]を[ミリメートル(mm)]にしておいてください。 16 ちなみに[テキストボックス]とは文書のなかの文書といったたぐいでしょうか。だから横書きと縦書きが選べますが、図版では同じ事です。 |