社会調査工房オンライン-社会調査の方法
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8-2 内容分析のマテリアル(分析媒体)は逃げもしないし, 隠れもしない
8-2-4 テレビジョン, アニメーション, 映画, ライブ録画, 音楽ビデオクリップなど映像


 内容分析のマテリアルとして、テレビジョン, アニメーション, 映画, ライブ録画, 音楽ビデオクリップなど映像を扱うこともできます。映像に含まれる音声については、文字化することで通常の内容分析が適用できますが、映像の動画部分については、研究報告や卒業論文の仮説に沿った手続きを定めた上でそれに則って分析しなければなりません。詳しくは、8-4-5 (準備中)で述べます。
  • テレビジョン
  • アニメーションと映画
  • ライブ録画と音楽ビデオクリップ
 テレビジョンの内容分析は、新聞同様に古くから行われてきました。商品やサービスの宣伝すなわちテレビ・コマーシャルの視聴が、消費行動や好感度に差が生じさせるか否かを測定するのです。このようなアンケート法との併用によって、マスメディアの影響を測ることを効果研究と呼んでいます。コマーシャルで登場させる人物、キャラクター、風景、用いる音楽、人物の発する言葉、すなわちコマーシャルの発するメッセージの如何によって商品やサービスの売れ行きが変わるという仮説を下に、広告代理店や企業の広告部では調査研究を行っています。コマーシャルをテレビジョンの報道番組やトーク番組に、消費行動を政党支持や投票政党に置き換えれば、有権者の投票行動を予測する政治社会学の効果研究となります。
 「架空の一週間」を考えてみましょう。1年を52週(1年=365日=52週×7日+1日)と考えて、曜日毎に異なる週を52週から1週ずつ無作為抽出し、まさに架空の一週間を構築します。例えば、7月21日の月曜、12月16日の火曜、1月8日の水曜、5月22日の木曜、11月14日の金曜、4月19日の土曜、9月7日の日曜という具合です。その7日間について、テレビジョン視聴率が相対的に高い午後7時から午後11時までの4時間を、ハードディスクなどに録画した上で、全ての番組とコマーシャルについて内容分析を施すのです。録画対象は、神戸市であれば、地上波としてサンテレビ、毎日放送、朝日放送、関西テレビ、読売テレビ、これに加えてNHK総合とNHK Eテレの7局を含めれば網羅的な分析が可能になりますね。196時間=7日×4時間×7局、のテレビジョン放送の内容分析は、その年に地上波によって発信されているメッセージの縮約された姿です。196時間は決して長くはありません。もし全放送内容を対象としたら、気が遠くなる50,000時間前後となりますから、その0.38%で済むことになります。よりコンパクトに纏めるにはサンテレビとNHK Eテレを割愛して、5局(140時間、0.27%)とするやり方もあります。
 アニメーションと映画は、劇場以外にテレビジョンでも放映されますが、ここではDVDやブルーレイディスクにパッケージされたものを考えてみましょう。パッケージされているものは、8-2-2で述べた紙媒体で号毎に纏まっており明確な区切りがある新聞と雑誌に近い性格があり、マテリアルとして安定しており扱いやすい利点があります。また、放送時間の制約などの理由で一部がカットされたりすることがありますから、放送内容という視角なのか、作品自体という視角なのかによってどちらをマテリアルとするかが分かれてきます。定時枠で放送されるテレビアニメーションの場合は、逆に、DVDやブルーレイディスクに商品化される際に収録されない回がありえますから、こちらも注意する必要があります。
 音楽DVDやウェブ上の動画サイトでアクセスできるライブ録画と音楽ビデオクリップも内容分析の対象です。レコード会社などで製品化されたDVDやブルーレイディスクは上で述べたパッケージ化されたアニメーションと映画と同様に扱えます。動画サイトなどからのメッセージは、8-2-2で述べた商品、サービス、店舗などの宣伝を目的とした無料配布のメディアであるフライヤーやチラシに性格が似ています。

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