社会調査工房オンライン-社会調査の方法
←→
8-2 内容分析のマテリアル(分析媒体)は逃げもしないし, 隠れもしない
8-2-7 日常会話, 電話など私的音源


 日常会話や電話など私的音源は、当事者の合意の下に録音され、その公表が許諾されていれば内容分析のマテリアルとなりえますが、面接法でのインタビューなどを除けば、私的音源でそのような条件を備えることはめずらしいことです。幸運に恵まれた時のみ、その利用を試みましょう。
  • 研究調査であることを事前に知らせた上で会話を録音する
  • フィールドノートを文字起こしした上で内容分析を行なう
  • 研究成果をインフォーマントや協力して貰った方々には必ず還元する
 面接法でインフォーマントの語りを録音させて貰う場合、第一に記憶の助けにするための録音そのものの許諾、第二に録音をフィールドノートにインタービュー記録としてとして文字化することの許諾、第三にフィールドノートやそれを用いた研究成果の公表の許諾、といった大別して3種類あるいは3段階の諒解事項が考えられます。「録音しても良いですよ」という返事は、厳密には第一の許諾まで、大目に見ても第二の許諾まででしょう。ゼミナールでの研究報告や卒業論文とはいえ、インフォーマント当事者と調査者のみならずそれ以外の第三者に公表公開することには違いありませんから、単純に「録音して宜しいですか」だけではなく、研究レポートや卒業論文に使わせて下さい(引用や参照をさせて下さい)」というお願いをしておく必要があります。インフォーマントとの信頼関係であるラポールがある程度構築されるまでは録音は控えることが無難でしょう。
 インフォーマントの語りをインタービュー記録としてフィールドノートに文字起こしすることは、大変骨の折れる作業です。録音時間の数倍もの時間がかかるのが普通です。しかも、この段階では分析対象となるマテリアルが準備されたに過ぎないのです。その後、はじめてマテリアルとしてのインタビュー記録について、新聞や雑誌と同様な内容分析を施してゆきます。
 雑誌や新聞、テレビジョンやラジオのようなマスメディア経由のマテリアルとは異なり、日常会話や電話といった私的音源は、8-2-6で述べた日記、手紙、メールと同様に、その取り扱いは充分注意して下さい。そして、レポートや卒業論文が仕上がったならば、インフォーマントや協力して貰った方々に必ず研究成果を還元することが研究の作法です。

 


←→
copyright(c)2004 Konan University All Rights Reserved.