ファッション誌の記事誌面や記事題名、目次などにおいて「かわいい」という単語の出現頻度数を測定することを考えてみましょう。「かわいい」は平仮名の「かわいい」だけを数えれば良いのか。それとも、カタカナの「カワイイ」、漢字表記の「可愛い」、ローマ字の「kawaii」も数えるのか。あるいは、「かわいい」「カワイイ」「kawaii」はそれぞれ別に数えるのか。造語の「安かわ」「激カワ」は、「かわいい」として数えるのか、そうではないのか。これらのことを、内容分析の具体的作業に入る前に、すべて決めておく必要があります。分析規準を事前に定めておくことは、アンケート調査で用いる質問紙における、質問文と選択肢作成に該当する手順といえます。
「かわいい」に、平仮名の「かわいい」、カタカナの「カワイイ」、漢字表記の「可愛い」、ローマ字の「kawaii」、造語の「安かわ」「激カワ」など、「かわいい」の異字同訓や類義語、関連する語をすべて含めて、「かわいい」として数える方法を併合法(annexation coding)と呼びます。併合法における、併合とは複数のものを合わせて一つとして扱うという意味です。ここでの英語のcodingもしくはcodeとは誌面に出現した単語や文の頻度を数えるための符号化規準のことを指します。他の例で示せば、「ねこ」に「ネコ」「猫」「にゃんこ」「ヤマネコ」「家猫」「野良猫」などをすべて含めるのも併合法です。
併合法のように異字同訓や類義語、関連する語を一つにまとめてしまうのではなく、「かわいい」「カワイイ」「可愛い」「kawaii」「安かわ」「激カワ」などを、すべて別の単語として個々に数えるのが分離法(separation coding)です。
併合法は、最初から大まかにまとめているため測定も単純で作業時間も節約できます。集計結果の意味も直感的に掴みやすく、その解釈も容易です。その反面、いったん併合してしまった異字同訓や類義語、関連する語を元に戻すことは出来ませんから、これらの語個別の出現頻度や語同士がどのような関係にあるのかは判りません。併合法で計ったら、異なる二つのファッション誌間で「かわいい」の出現頻度数が同じであったとしても、一つのファッション誌ではその中身はすべて「カワイイ」であり、もう一つではすべて「可愛い」だった、ということもありえます。測定の手間が増え、作業時間もその分だけ必要になりますが、分離法であれば、こうした問題にも対応できます。8-4-2で述べたケースの定義の時と同様に「大は小を兼ねる」のではなく「小は大を兼ねる」ということです。
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