5-1-9 いろいろな「みる」
3.文脈のなかで“みる”
3−1 踏切ぞいのグラフィティ
このようなグラフィティも、それひとつだけを捉えるのではなく、周辺とのかかわりのなかで捉えると、さまざまなことが発見できます。このグラフィティは、次の写真でみるように、このような場所で描かれていました。
3−2 「画廊」の看板をめぐる「文脈」 つまりこの状況では、あたかも「“画廊”に展示されている“作品”として、グラフィティが鎮座する空間」というものが演出されているように見えるということです。そうしてみると、「画廊」の看板の左隣にみえる、骨組みだけの枠組みの中に収まるようにして描かれたグラフィティは、まるで「画廊に飾られている額入りの絵画作品」を表現しているかのように見えますし、さらにその意図を、他の描き手たちも汲み取ったかのように、誰も「画廊」の看板には手をつけず、周辺に自らの作品を残したかのように見受けられます。 3−3 描き手たちが共有する「信条」 したがって写真の場所においては、「画廊」という言葉の意味を、描き手たちが逆手にとって利用したともいえます。それはまさに「限られた条件のもとで、いかに自分たちの行為を効果的に表現するか」という、グラフィティの描き手たちに共有されている独特のルールや信条、流儀といったものが特徴的に表れやすい状況であったと考えられます。そのような「文脈」により、この壁だけが近隣で唯一、グラフィティの集中を呼び込んでしまったのではと推測することができます。 |