内容分析とは、一言でいえば、メッセージの社会学的分析、ということでしたね。社会学で扱うデータには、数字に換算された量的データと、数字には置き換えられていない質的データの二種類があります。定量分析は、量的データの集計や解析を指します。定性分析は、質的データの分類や解釈を指します。僅かな例外を除けば、アンケート法が定量分析のみ、面接法が定性分析のみに偏るのに対して、内容分析は、定量分析としても、定性分析としても使える、融通の利く便利な調査法なのです。
定量分析としての利用。芸能人の話題を掲載することが多い週刊誌や情報誌の内容分析を考えてみましょう。その号の表紙あるいは目次に、個人団体問わず特定の芸能人の氏名や名称が掲載されているか否かを調べ、デビューから近年までの年ごとの掲載数比較をすることによって、その芸能人へのマスコミ側からの注目度変遷の一つの目安を得ることができます。また、誌面での記事頁数、専有面積、字数や氏名・団体名称の出現回数などを数えれば、更に正確さや精密さが増すことでしょう。これらは、内容分析を通じて、量的データを構築することであり、定量分析と呼ばれることになります。
定性分析としての利用。上記の分析の際に、記事の見出しも併せて書き取ってゆくとしましょう。「○○はただいま絶好調」「どこでも大人気△△」「今年の流行語大賞は□□」といった言葉が内容分析のための作業ノートやエクセルシートに記されていく訳です。多くの場合、デビュー直後から最近年に至るまでの期間、注目度が上下しており、その波があるようです。このことは上記の定量分析で判るはずです。ある芸能人がデビュー年には誌面に45回出現したとしましょう。スキャンダルのあった、5年前の年には20回でした。ところが、最近年では3回に減っています。ここから注目度の変遷は定量的に把握できますが、その際に、記事の見出しの文言を研究報告や卒業論文に引用すれば、分析の説得力が一気に高まります。デビュー年は「○○はただいま絶好調」「どこでも大人気△△」という見出しが目立ったものの、最近年では「イベントにも集客できず○○落胆」といった見出しに集約される、といった例示が有効でしょう。
もちろん、これらの定性分析で扱った週刊誌や情報誌の見出し自体について定量分析を施すことも可能ですし、定量分析を絡ませずに、メッセージの文言を抜き出し、それらを分類、解釈することを通じて定性分析のみを進めることも可能です。
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