社会調査工房オンライン-社会調査の方法
←→
5-1 基本編―フィールドワークを始める人へ
フィールドワークとは
5-1-1 フィールドワークとは



フィールドワークとは、現場に身をおき、人と状況に関わりながら心身をとおして情報を集め、道具を使って記録し、第三者に何か伝えようとする営みです。フィールドワークに定型はありません。調査のテーマ、調査者の立場、予算、時間、人との出会いや現場の状況などによって、さまざまな制約のもとで、多角的なアプローチが可能です。そこから日常の風景を改めて意識したり、当たり前のことだと思っていた考え方、習慣とは異なる生活に接して、戸惑ったり、違和感を覚えたり、感動したり、心理的な揺らぎをも含めた体験をとおして、対象から学ぶ方法です。
関わる→調べる→伝える

フィールドワークとは、特別な場所で行われるものではありません。それぞれの現場での個人的な体験、そこでの疑問や関心から始まります。ここでの現場とは、「私」が、誰かと、何かと関わり合う場のことです。家や地域での日々の暮らしや、学校や会社などの集団や組織での活動、友人や知人のつながり、特定の場所や関係をこえた匿名的なネットワーク、などさまざまな現場があります。

フィールドワークには、テーマを探るというプロセスも含まれます。漠然とした関心はあるが、言葉でそれをうまく説明できないという段階にこそ、心身をとおして考える面白さがあります。歩いたり、眺めたり、聞いたり、質問したり、触れたり、嗅いだり、味わったり、集めたり、参加したり、巻き込まれたり、巻き込んだりしながら、身体感覚をフルに活用し情報を集め、何かを発見したり、意識したり、問題化してゆきます。最初に目的ありき、とは限りません。

探索の始まりが個人的な体験や関心からであっても、「ことば」や「かたち」をあたえることによって、問題や情報を人と共有し、ともに考えることができます。情報を集めるだけではなく、伝えることによって、フィールドワークは展開してゆきます。

フィールドワークは五感を用いて行うもの、といわれますが、それだけでは「体験」に終わってしまいます。心身をとおしてえた情報を、道具を使って記録することによって、初めて、何かを第三者に伝えることができます。記録作成の作業をとおして自分の視点や感じ方、考え方を改めて知ることができます。「体験=フィールドワーク」、ではありません。

フィールドワークは、個人の体験をとおして習得してゆく特殊技能だとみられることがあります。私は、むしろ、今、ここで、ちょっとした発想と、少しの道具があればできる身近な営みだと思います。調査のプロセスにおいては、本コンテンツにもあるようなさまざまな社会調査の技法を使います。しかし、特定のスキルがどの場面においても通用するとは限りません。状況にあわせて技法を工夫し、組み合わせるところに創造的な可能性があります。

←→
copyright(c)2004 Konan University All Rights Reserved.